研究領域

Research area

① 機能性消化管疾患の病態、疫学および新規治療法の開発

機能性消化管疾患は、慢性的に腹痛、便通異常(下痢、便秘)などの症状を呈するものの、その原因となる異常所見を認めない疾患の総称で、近年は脳腸相関疾患とも言われています。代表的な疾患には機能性ディスペプシア(一般に神経性胃炎、ストレス胃炎といわれる)や、過敏性腸症候群があります。その原因、病態生理はまだ不明な点が多く、有効な治療法も少ないのが現状です。これら機能性消化管疾患の病態、疫学および新規治療法の開発に取り組んでいます。

② 臨床研究方法論・教育論と治療評価法に関する研究

医薬品・医療機器等の承認審査基準の明確化を目的とした次世代医療評価指標の作成や代替エンドポイントの妥当性を評価する解析手法の確立に取り組んでいます。具体的には、種々の疾患の特性に応じた臨床研究デザイン、エンドポイントの設定、個々の研究に最適な評価項目の確立を根ざしています。更に、臨床医、薬剤師、看護師など様々な職種の医療従事者が、臨床研究立ち上げから英語論文発表までのプロセスを完遂する為の教育法の開発と確立に取り組んでいます。

③ 内臓知覚に関する基礎的研究

腹痛、胸やけ、腹部膨満感などの消化器症状は内臓知覚と呼ばれ、内族知覚過敏は種々の疾患の病態に関与すると考えられています。体性通と異なり、これら内臓知覚の発現機序についてはまだよくわかっていません。私たちは各種イオンチャネルに注目し、イオンチャネルが内臓知覚、消化管運動にはたす役割の検討を行い、内臓知覚の分子メカニズム解明を目指して、機能組織学教室と共同で基礎的研究を進めています。

④ 消化器・循環器疾患における大規模データベース研究

診療レセプトデータや日米の規制当局が公開している有害事象自発報告データを臨床研究として活用できるように解析手法の確立に取り組んでいます。種々の消化器・循環器疾患を対象に、これらリアルワールドのビッグデータを解析することにより、リアルワールドエビデンスの創出を目指します。

⑤ 心不全の病態解明と治療開発

超高齢社会に突入した日本では、心不全、特に左室駆出率が保持された心不全(heart failure with preserved ejection fraction: HFpEF)が急増しています。HFpEFは生命予後が不良であるだけでなく、再入院率も高いため医療経済を圧迫しています。HFpEFの発症予防と治療法の確立を目指し、心臓超音波検査、運動負荷検査、心臓カテーテル検査等の臨床データを解析することによりHFpEFの病態解明に取り組んでいます。

⑥ 数理モデルやシミュレーションを活用した新興感染症に関する研究

国内に住む人々が、COVID-19をはじめとする新興感染症による感染や重症化を防御し、効率良く日常生活や社会活動を共存させる新興感染症に頑強な社会の実現を目指した研究プロジェクトを行っています。現実社会で感染者の疫学情報、患者の臨床医学データ、人文・社会科学データ等を収集し、それをサイバー空間で、AIやシミュレーション、数理モデルなどを使って、「感染の流行予測」、「国内外の流行監視」、「重症化アルゴリズムの構築」などを行い、分かりやすく加工した情報をスマートフォン向けアプリ等を開発して実社会にフィードバックする、という流れをベースとした異分野共創型CPSモデルによる研究を行っています。

本研究に関連する研究プロジェクトのwebサイト:
感染リスク共存社会を支えるCPSモデルによる意思決定支援基盤の構築
(JST未来社会創造事業『超スマート社会の実現領域』探索研究課題、研究開発代表者:間辺利江)

⑦ 肺炎及びARDS(重症呼吸窮迫症候群)の予防・治療に関する国際共同研究 

ベトナムをはじめとする国々との国際共同研究にて、COVID-19を含む新興感染症の疫学調査、地域住民調査、患者データを使った臨床研究、新規治療方法の開発や日本-ベトナムとの人的国際交流等、包括的視点から、COVID-19や鳥インフルエンザH5N1感染など新興呼吸器感染症による死亡につながる重症肺炎やARDSの予防・治療に関する研究を行い、致死率の高い感染症による重症化防御を目指します。

本研究に関連する研究プロジェクトのwebサイト:
COVID-19や将来の新型ウイルス等による感染症に頑強なコミュニティー作りの為の学び合い
(トヨタ財団2020イニシアティブ助成、代表:間辺利江)

⑧ 疾病の発生と重症化に影響する社会経済的背景についての研究

疾病、特に感染症の発生と重症化には、臨床的要因以外にも、人文・社会経済的要因が関連することがこれまでの研究で明らかになっています。感染者や重症者、死亡者などが空間的・時間的にどこに集積しているかを統計的に解析し、それらと関連する要因を国や地域のGDPなどの経済要因、気温や湿度等の天候要因、人々の生活や慣習、歴史的背景、交通事情等々、疾病の発生と重症化に関する様々な要因を、機械学習などを用いて包括的に検討し、感染症の流行監視地域の確定、限りある医療や人的資源の効率的な配分、医療体制強化の施策等々への提言に結んでいます。

⑨ 小規模な臨床試験におけるデザインと統計解析の研究

患者数が限られているために小規模な臨床試験しか実施できない場合でも、外部対照の利用やベイズ統計を活用した効率的な臨床試験デザインの研究を行っています。また、漸近正規性を仮定した統計解析法はサンプルサイズが小さい場合には第1種の過誤確率が上昇することが知られています。そのような場合でも、第1種の過誤確率を適切にコントロールし、妥当な結果が得られるような補正方法の開発にも取り組んでいます。